「トラウマ」の由来と語源 ~ ドイツ語?それともギリシャ語?
2016/04/09
「心の傷」という意味で用いられる「トラウマ」という言葉.
日常で比較的よく使われ,よく知られている言葉なのにもかかわらず,その由来は有名ではありません.
まあ,文字通りカタカナ表記の言葉なので,昨日ご紹介した「コンサート」と同じく「外来語かな?」という予想はできますが,中には「虎馬だ!」という人もいるようです.
そこで,今回はこの「トラウマ」という言葉の由来を探っていきましょう.
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結局「トラウマ」は何語由来?
「トラウマ」の由来について調べてみますと,「ギリシャ語が由来である」とする話と「ドイツ語が由来である」とする話の両方が出てきます.
実はこれら,どちらかが間違っているというわけではなく,どちらも正しいのです.
どういうことか詳しく見てみましょう.
おおもとはギリシャ語
今の日本語の「トラウマ」のもっとも古い由来はギリシャ語の「τραύμα」(トラウマ)であるとされています.
しかし,このギリシャ語の「τραύμα」には現在のような「心的外傷」という意味はなく,単なる「傷」という意味があるのみなのです.
したがって,誰かによって「精神的な傷」という意味が付加されたということになります.
それは次の節で説明します「フロイト博士」であるとされているのです.
ギリシャ語からドイツ語へ
「トラウマ」を「精神的な傷」という意味で初めて用いたのはオーストリアの精神科医,ジークムント・フロイト博士(1856-1939)であるとされています.
先ほど説明しましたギリシャ語の「τραύμα」はドイツ語の「Trauma」(トラウマ)に変化し,やはり「傷」という意味を持っていました.
フロイト博士が住んでいたオーストリアの公用語はドイツ語だったので,精神科医であるフロイト博士は,「精神的な傷」という意味でドイツ語の「Trauma」を使い始めました.
瞬く間にこの意味は世界中に広まり,単なる「傷」という意味でしか用いられるのみだった「トラウマ」は,「精神的な傷」という意味でも用いられるようになります.
日本に渡った「Trauma」
ドイツ語の発音はいわゆるローマ字に近いので,traumaの読みは「トラウマ」となります.(実はこれでも大学でドイツ語を勉強していました^^;)
このドイツ語の「trauma」が日本にわたり「トラウマ」となったわけです.
つまり,ギリシャ語で「傷」を意味するτραύμαがドイツ語に輸入され「trauma」となり,フロイト博士が「trauma」に「精神的な傷」という意味を当てはめ,それが日本語に入ってきた といういわけです.
なるほど,これならたしかに「ドイツ語由来」と言うことも「ギリシャ語由来」と言うこともできますね!
最後に
実はドイツ語の「trauma」という単語,英語にも伝わっており綴りは同じく「trauma」と書きます.
日本語と違い,英語の「trauma」には今でも「精神的な傷」「肉体的な傷」の両方の意味があります.
したがって,料理をしている最中に間違って指を切ってしまっても「トラウマ」(肉体的な傷)ができるわけです.
どうして日本ではもっぱら「精神的な傷」のことしかささなくなってしまったんでしょうね?